


思いがけず、天神祭の「陸渡御(りくとぎょ)」に出くわしました。
どこからともなくお囃子の音と人だかり。
伝統の装束をまとった人々が列をなし、ゆっくりと目の前を進んでいく姿は、まるで絵巻物のような、古の物語を一頁めくるような趣がありました。
陸渡御は、天神祭のなかでも重要な行事のひとつ。
神さまをお乗せした御鳳輦(ごほうれん)や神輿(みこし)などが、街中を練り歩いていくものです。
神さまが街を訪れ、人々の暮らしを見守ってくれる、そんな意味が込められています。
行列を導くように先頭を歩むのは、「御神牛(ごしんぎゅう)」と呼ばれる一頭の牛。
天神祭の主祭神・菅原道真公は牛と深いご縁があり、亡くなった際も、牛車に乗せて運ばれ、牛が立ち止まった場所に埋葬されたという伝承があります。
こうした歴史から、牛は天神祭でも神さまの乗り物を曳く役割を担い、神聖な存在として行列に加わっています。
大阪天満宮からはじまる陸渡御は、やがて川岸へ。
そこから神さまは船に乗り換え、船渡御へと続いていきます。
天神祭といえば、船渡御と奉納花火を思い浮かべる方が多いでしょう。
水面を浮かぶ船の灯りと華やかな花火、その感動の瞬間を迎えるための架け橋となる陸渡御のことも知ると、お祭りの魅力がより深まります。
人の多さにちょっと圧倒されながら、屋台の並ぶ商店街へ迷い込み、かき氷にたこせん、金魚すくいにりんご飴、夏祭りならではの光景に心が弾みました。
ただ、暑さは容赦なく。
夕方とはいえ、じんわり滲むような熱気に包まれ、汗が止まりませんでした。
この暑さもまた、夏祭りの景色の一部なのかもしれませんね。
そんなことを思いながら、賑わいを背にそっとその場を後にしました。
それでは、また次の更新をお楽しみに。