平和の象徴


人慣れしているのか、近くに羽ばたいてきた鳩に驚きました。

白い鳩を見かけるとなんとなく良いことがありそうで嬉しくなります。

「平和」や「希望」を象徴する白い鳩

白い鳩は、ユダヤ教やキリスト教の正典である旧約聖書の創世記『ノアの方舟』の物語の中で、困難の終わりと新しい始まりを知らせる役割を果たし、試練を乗り越えた後の平和と希望の象徴となる存在です。

ノアの方舟

神は、人々の堕落や罪深い行いに怒り、大洪水を起こして地上のすべてを滅ぼす決意をしました。

ただし、アダムから数えて10代目の子孫〝神に従う無垢な人〟であったノアとその家族、そして動物たちを救うことにします。

神は方舟をつくるようノアに命じました。

神の言葉に従うと、やがて雨が40日40夜降り続き、地上は完全に水に覆われ、方舟に乗ったノアたちは助かりますが、それ以外の生物はすべて滅びました。

雨が止み、水が少しずつ引き始めて、ノアは地上が乾いたかどうかを確認するために何度か鳥を放すと、白い鳩がオリーブの若葉をくわえてノアのもとに戻ってきます。

それは、神の罰である大洪水が終わり、大地に植物が再び芽生え始めたことの知らせでした。

この場面から、白い鳩は「新しい命の復活」と「平和の訪れ」を象徴するものとなりました。

再び鳩を放つと戻らなかったため、水が完全に引いたことがわかったノアは家族や動物たちと方舟を降り、地上で新しい生活を始めました。

ノアは神に感謝の祈りを捧げ、神は二度と地上を洪水で滅ぼさないことを約束し、その証として、空に虹が掛かりました。

キリスト教では、鳩は聖霊(Holy Spirit)の象徴としても描かれます。たとえば、イエスが洗礼を受けた際、聖霊が鳩の姿で降りてきたとされています。

これにより、鳩は「神の祝福」や「神聖な平和」のイメージを持つようになりました。

平和の象徴のイメージを世界中に広めたのはピカソ

白い鳩が平和の象徴として世界中に知れ渡るようになったのは、スペインの画家パブロ・ピカソの影響であるとされています。

第二次世界大戦後、1949年にパリで開催された国際平和会議のポスターに、ピカソは白い鳩を描きました。

そのポスターが有名になり、鳩は平和の使者というメッセージが日本をはじめとする世界中に浸透したといわれています。

ピカソは幼少期から鳩が大好きで、アトリエでも飼っていたことがあり、娘にもスペイン語で鳩を意味する「パロマ」という名前をつけています。

ポスター以外にも、オリーブをくわえた鳩など、多くの作品を残しました。

鳩と人の暮らし

ちなみに、野生の白い鳩を見つけたからといって捕獲してはいけません。

日本において鳩は鳥獣保護管理法で保護されており、許可なく駆除や捕獲を行うことは禁止されています。

でも、ペットショップなら購入することができるので、もし鳩を飼育したい場合はペットショップでお迎えしましょう。

また、白い鳩には神聖なイメージが強いですが、現在では街で見かける野生の鳩は「害鳥」としての被害が問題視されるようになってきました。

鳩の糞が自動車や建物等を汚したり、その糞からクリプトコッカス症やトキソプラズマ症などの有害な菌や原虫を伝播する危険があり、警戒されています。

最近では鳩対策の商品も多く販売されていますね。

鳩は糞をすることができたところは安全な場所であると認識する動物で、強い帰巣本能があるため、ベランダなどに侵入を許してしまうと、何度追い払っても鳩がいなくなることはありません。

たった一回の侵入を食い止められるかどうかで、鳩トラブルに巻き込まれるかが決まることを忘れないようにしましょう。

害鳥に対しての一番の対策は、「鳥が住みつく前に寄せつけない」ということです。

さて、平和の象徴とされる一方で、害鳥として眉をひそめられる存在という側面もありますが、鳩は、古代からその帰巣本能を活かし伝書鳩として情報を伝える仕事をしたりと、人々の生活に役立つ存在でした。

鳩の習性を考慮しなかった建築や都市計画、無配慮なエサやりなど、人間が無意識にやっていることが繁殖を促す結果になっていることもあります。

人間側もそれを理解して共存の道を模索することが必要ですね。

それでは、また次の更新をお楽しみに。


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