桜の盗蜜


桜が満開になる頃、舞い降りた花びらだけでなく、まだ散る前の桜の花が一輪そのまま落ちているのを見かけたことはありませんか。

このしわざ、風でも虫でもない、犯人がいます。

桜の花をもぎとるように地面に落としているのは大抵、スズメです。

花の蜜を吸う鳥は、メジロやヒヨドリがよく知られていますが、彼らはくちばしが細長く、また舌先が筆のようにいくつもに分かれて花の蜜をなめやすくなっているので、花の根元までくちばしを差し入れて、花を散らすことなく蜜だけを吸うことができます。

そうして蜜を吸ってくれることで鳥のくちばしや顔に花粉がつき、他の花のもとへと運んでくれます。

スズメはくちばしが短く太いので、くちばしを花に差し入れても桜の蜜まで届かないため、花の裏から、根元をつついて穴をあけ、花を食いちぎるという強硬手段に打って出ています。

花ごと食いちぎって、花の根元にある蜜を吸ったらまるごとポイ、とするのです。

この行動は、花粉を運ばずに蜜だけ得ていることから、「盗蜜(とうみつ)」と呼ばれます。

ただ、ソメイヨシノは遺伝的に受粉しても種子がほとんどできない品種であるため、桜にとってはどちらでもいいことなのかもしれません。

お花見をしているとき、桜がそのまま地面にたくさん落ちているのを見かけたら、スズメたちがどれだけ喜んで蜜を楽しんだかわかりますね。

見上げると一生懸命に蜜を吸っているスズメに出会えるかもしれません。

花の蜜だけでなく、新芽や昆虫も目当てにして桜の木にはさまざまな鳥たちがやって来ます。

春になると人も鳥も、桜に集うのですね。

それでは、また次の更新をお楽しみに。


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